うつ病とは
日常生活や社会生活の中でつらい体験をして、落ち込んだり、悲しい気持ちになったりといった憂うつな気分になることは誰にでもあることです。
普通ですと、しばらくたてば解消されるものですが、この憂うつな気分が長い期間、たとえば2週間以上にわたって続いたり、日常生活にも支障が出るようになってしまったり、さらには「死にたい」と考えるようになったら、「うつ病」という病気にかかっている可能性がありますので、早めに受診ください。
うつ病は気分障害と呼ばれる病気のひとつで、日本人の5~10%の方が生涯の内にうつ病を経験しているともいわれています。
女性の方が男性の1.6倍と多い傾向で、妊娠や出産、更年期などと関係があると考えられているうつ状態およびうつ病に注意する必要があります。
「うつ病」の原因はまだよくわかっていませんが、ストレスがうまく処理されず、心と体のバランスが崩れ、脳の働きになんらかの問題が起きて発症すると考えられています。こうした憂うつな気持ちが続く時は自分の頑張りが足りないからだとか、甘えているせいだなどと自分を責めず、「うつ病」であることを疑ってみてください。
また若い世代だけでなく「高齢者うつ」(または「退行期うつ」)というものもあり、相談が増えています。
うつ病が疑われる精神的な症状例
- 憂うつで悲しい気分、沈んだ気分になる
- 何事にも興味がわかず、楽しくない。趣味だったことにも興味を示さなくなる
- 気力、意欲、集中力の低下を覚える(何をするにも面倒と感じる)
- 人に会うことが嫌になる
- 心配事が常に頭から離れず、考えが堂々めぐりする
- 漠然と不安な気持ちが消えない
- 失敗や失望、悲しみから立ち直れない
- 自分を責め、自分は価値がない人間だと思ってしまう
- 死にたいと思ってしまうようになる(希死念慮) など
うつ病が疑われる身体的な症状例
- 食欲がわかない、あるいは必要以上に食べすぎてしまう
- 性欲を感じない
- なかなか寝付けない、あるいは寝すぎてしまう
- 体がだるく疲れやすい
- 頭痛や肩こりがある
- 胃の不快感や、便秘、下痢がある
- 動機やめまいがする
- 口やのどが乾く、のどが詰まる
- 身体のあちこちが痛い など
周囲の人から見てわかる、うつ病のサイン例
- 暗い表情をしている
- 自分を責める言葉をよく口にする
- 理由なく涙ぐむ事が多い
- 会話に加わろうとせず、呼びかけに対する反応が鈍い
- 意味なく動きまわったり、落ち着きがない
- 飲酒の量、回数が増えた など
うつ病の治療
うつ病の治療にあたってはまず患者さまのお話をじっくりとお伺いし、患者さまごとの具体的な症状や周囲の環境、どのくらい続いているのか、どのような経緯なのか、何かご要望があるかなどをお聞きした上、それぞれによって治療を考えていきます。
まず重要になるのが「休養」をしっかり取って心身のエネルギーを補うことです。可能であれば休職や休学も考慮し、職場や学校、家事から離れ、自分のペースでゆっくりと過ごせる時間や空間を作る事をお勧めします。現状においてのストレスとなる要因から離れるためには、会社などでは配置転換等の「環境調整」を行います。「休養」にしろ、「環境調整」にしろ、病気であることへの周囲の理解が必要です。
「休養」や「環境調整」とともに、精神療法によって、心理面からの治療を行うこともあります。医師や臨床心理士と会話をしていく中で、不安を和らげながら、自己否定感などマイナスの方向に向かいがちなものの見方や受け取り方などへの対処の方策を探っていくものです。それによりストレスの軽減を図っていき、精神面を整え、回復過程をサポートするという治療法です。
うつ病では薬による治療も有効です。適切に薬を使用していくことで症状の改善を図ることが望めます。薬の効果をきっかけに、徐々に日常生活に戻れるようになることで、さらに心身の回復が期待できます。使用する薬としては主に、脳のセロトニンの濃度を高める選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、三環系抗うつ薬、漢方薬などがあります。医師の指示にしたがって、正しく服用していくことが大切です。