自律神経失調症とは
人間の神経は脳と脊髄という「中枢神経」と、体中に張り巡らされた「末梢神経」に分けられます。このうち末梢神経は感覚神経や運動神経といった自分の意志で体を動かす「体性神経」と、自分の意志とは関係なく刺激に反応して体の機能を調節する「自律神経」に分かれます。この機能調節に関わる自律神経が、ストレスなどによって異常をきたすと発症するのが自律神経失調症です。
自律神経は呼吸、体温、血管や内臓など生命維持に必要な動きを無意識のうちにコントロールしています。自律神経には交感神経と副交感神経という2つの神経があり、基本的に体を活発に動かすときは交感神経が、リラックスさせるときは副交感神経が働くようになっていて、アクセル(交感神経)とブレーキ(副交感神経)にたとえられています。
健康な時は、これらの正反対の役割を持つ神経が上手くバランスを取ることで正常な状態を保っています。しかし、ストレスや疲労、ホルモンバランスの乱れなどによって、どちらか片方の神経が過剰に興奮した状態が続く場合があります。すると様々な症状が現れるようになります。
また、季節の変わり目などに気圧の変化や一日の内での寒暖差等によって引き起こされることも多く、特に高齢の方のご相談が多くなっています。これは加齢によって体温を調節する機能が低下しているため、適応が難しくなっていることによります。また自覚症状も感じにくくなっていますので注意が必要です。
自律神経失調症の症状
自律神経は全身の器官の働きを調整している神経であるため、その働きが上手くいかなくなると引き起こされる症状は多岐にわたります。症状の現れ方や期間は人それぞれですが、自律神経を司っている視床下部の変調によって、「体がだるい」「疲れが取れない」「眠れない」「食欲がない」などの全身症状がみられるほか、体の各器官にも様々な症状が現れる場合があります。
自律神経失調症の症状の例
- 動悸や胸部圧迫感、胸痛を覚える
- 息苦しさを感じる
- 吐き気や胃部不快感、腹痛、下痢、便秘などの症状がみられる
- めまい、耳鳴り、立ちくらみなどの症状がある
- 頭痛、頭が重いといった感じがする
- 微熱や体のだるさ、食欲不振といった症状がある
- 手足にしびれ、いたみ、冷えを感じる
- 異様に汗をかく、体全体にかゆみを感じる
- 頻尿や、生理不順になった
- 目が疲れやすい、また乾きやすい
- 口が乾く、味覚がおかしいと感じる
- 喉につまり感がある
- 気分の落ち込みや不安、イライラを感じやすくなった
- 不眠になった など
自律神経失調症の治療
自律神経失調症は患者さまによってその原因や症状の出方が異なります。そのため、それぞれの患者さまを丁寧に診察して、治療法を考えていく必要があります。たとえばストレスが原因の場合は、ストレスの原因となっているものを取り除く「環境調整」を行い、またカウンセリングや認知行動療法といった心理療法で、ストレスへの上手な対処法を考えていきます。
生活リズムの崩れが原因と考えられる場合はなるべく昼夜規則正しい生活が送れるようにすることを目指します。また交感神経の働きを弱め、副交感神経の働きを強化する自律神経訓練法や呼吸法などをとり入れて、体をリラックスさせ、心が安定するようにしていきます。
症状が辛い場合、心理療法と併せて抗うつ薬や抗不安薬などの薬による治療を行う場合もあります。また女性の患者さまで多くみられる、ホルモンバランスの崩れが原因と考えられる場合はホルモン剤の処方を行っていきます。
自律神経失調症の改善でなにより大切なのは、ストレスコントロールと、規則的な睡眠や食事などの生活習慣の見直しです。散歩や体操、入浴、音楽鑑賞、アロマテラピーなど、リラックスできる時間をできるだけつくることもお勧めします。